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東洋交通労働組合

TEL. 03-5970-9304

〒115-0051 東京都北区浮間5-4-51

執行委員長挨拶/2024運動方針                                GREETINGS

菊池執行委員長メッセージ

 

「価値ある移動を提供し、
公共交通機関としてのタクシーを守ろう!」

 国民生活に多大な影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症は、未だ収束には至っていないものの、社会経済は産業ごとの課題を抱えながらもコロナ禍の先へと前進しています。 一方、円安やロシアによるウクライナ侵攻がもたらしたエネルギーや原材料価格の歴史的な高騰で物価上昇が止まらず、国民生活を圧迫し、加えて公的保険料負担率の上昇と増税が追い打ちをかけています。国民負担率は50%に迫る勢いで、私たちの生活は厳しい状況が続いています。また、日本は地震・台風などの自然災害が多い国とはいえ、気候変動の影響により、人命に係わるような大雨が降り浸水などの被害に遭われた仲間がいます。被害に遭われた方々には 心よりのお見舞いを申し上げるとともに、組合員のみなさまには、相互支援活動へのご理解、ご協力をお願いいたします。
 タクシー業界では、昨年11月に東京特別区・武三地区で行われた運賃改定を皮切りに、全国で一斉に値上げ申請が進み、行動制限の解除と運賃値上げによる営収増で 実質賃金は上昇し、低賃金への不満の声は少なくなっています。2023春闘では、特に運賃改定で値上げをした地域の多くの労働組合で「賃金・労働環境改善」を加味した回答を勝ち取っています。しかし歩合部分が多くを占めるタクシー労働者の賃金では、売上が増えれば歩合給が増えるのは当然の結果であり、賃上げとはいえません。なかには営収が上がったタイミングで賃率を改悪する悪質な事業者も存在し、労働組合としては今後も油断せず慎重に行動する必要があります。実質賃金は上がっても基本部分の底上げ改善に至った組合は全国でも少数だという現実を踏まえ、売上が減った時にも安心して暮らせる賃金を実現することが重要な課題です。 東京特別区・武三地区における稼働1日1台当たり営収は、2023年7月の業界平均で、税込み65,084円となり(前年同月の54,513円と比較し19.4%増)上昇しているものの、稼働人員数はコロナ前と比較して未だ2割減の状況で、乗務員不足が深刻化しています。行動制限の解除により人流が増え、国内だけでなくインバウンド需要にも応えられていない乗務員不足を理由にライドシェア推進派の声が勢いを増しており大変危険な状況です。乗務員不足を解消し、稼働台数を増やすことが業界全体の最優先課題です。
運輸業界だけにとどまらず、働き手の争奪戦のなかでタクシー業界が、良質な労働者を確保し公共交通機関としての地位を守り続けるには、タクシー業界のマイナスイメージを払拭する労働環境の改善と、景気に影響されやすい賃金の考え方を見直していく必要があります。働き続けたい魅力ある産業・魅力ある会社づくりに労使が尽力し、それぞれの立場で役割を果たすことが、タクシー産業全体の社会的地位を向上させ、ひいては良質な労働者の確保に繋がると考えます。
そもそもタクシー乗務員が不足した原因は、無責任な規制緩和によって引き起こされた低賃金化であり、またコロナ禍でも歩合給中心の賃金体系のまま満足な賃金補償もなく、離職者が相次いだことにあります。だからこそ、供給不足を解消するために、優先すべきはタクシー乗務員の安定した賃金を実現し、若者も女性も高齢者も働きやすい職場環境を整備し、タクシー乗務員として働く仲間を増やすことに他なりません。
 私たちはコロナ禍でも地域公共交通を支え続けたエッセンシャルワーカーとしての誇りを胸に、タクシー労働者の社会的地位の向上と、賃金・労働条件の改善、そして公共交通機関としてのタクシーを守るために、ともに闘いましょう!  

ライドシェアの脅威
 現在、タクシーの乗務員不足を理由に、ライドシェア推進派の「白タク=ライドシェア合法化」をすべきとの声が勢いを増しています。日本維新の会をはじめ菅前首相が、空港や観光地でタクシー不足が目立っていることについて、自民党内でライドシェア解禁について議論する意向を示すなど、連日SNSやネットニュースではインフルエンサーを使った「ライドシェアはタクシーより安価で便利」だと、その危険性や問題点を伏せたままの印象操作を意図した発信が目に付きます。
 コロナ禍前から始まり現在も、訪日外国人が海外のライドシェア配車アプリを使用しての白タク行為が日々堂々と行われており、巧妙な料金受領システムにより摘発を逃れているという実態があります。運転者は日本に在住あるいは日本で働く資格のない外国人も含まれており、成田・羽田空港等へ自家用車で迎えに行き、都内要所・ホテル、または近県観光地への送迎を日本のタクシー料金より安価な料金設定で行うというもの。本来なら日本のハイヤー・タクシー・バス等が得られるはずの利益を違法行為で横取りしています。方法としては海外の配車アプリで配車申し込みをした旅行者が、海外の口座に紐づけたラインペイのような決済方法で料金を支払うか、海外で申し込んだ旅行業者に支払う料金の中に白タク輸送料が含まれている形式で、配車を受けた運転者は自家用車で空港内パーキングに入り、パーキング内で待ち合わせ、旅行者をピックアップするというもの。パーキング内は違法駐車にはならず、普通に友人や家族を迎えに来たふりをして堂々と白タク行為を行い、摘発を逃れているという事実を黙って見過ごしてはならないと危惧しています。
 先日羽田空港で、関東運輸局・東京運輸支局・警視庁交通捜査課・警視庁東京空港警察署・東京出入国在留管理局・東京ハイヤー・タクシー協会・東京都個人タクシー協会が協力し、羽田空港において白タク行為防止の啓発活動とし、到着ロビーにて外国人旅行者に対してチラシの配布を行うなど、実態の把握と危機意識は共通で、労働組合としては、これまで通り行政や業界・公共交通を守る者すべてと協力体制で「白タク=ライドシェア合法化」を阻止する運動を強化すると同時に、外国人による白タク行為の撲滅に繋がる方策を練る必要があります。現在、国土交通省はライドシェアについて「運行管理や車両整備について責任を負う主体を置かないまま、自家用車のドライバーのみが責任を負う形態を前提としており安全確保の観点から問題がある」とし、これまで通りライドシェア合法化には反対の姿勢を示し既存の公共交通機関が需要に応えられるよう、各種支援や規制緩和に取り組むと答弁しています。
 世界中で唯一、ライドシェア合法化を水際で阻止してきた日本は、行政・業界・労働者・国民の安全な移動を守る者が、一丸となって重要性を訴え、同じ思いで反対運動を進め行動をしてきた成果であり、これからも公共交通機関としてのタクシーを守るために共闘していかなければなりません。安全・安心を担保し、一人でも多くの需要に応え、利用者にとって価値のある移動を提供することが、私たちに課せられた重要な任務です。同時に、乗務員ひとりひとりがライドシェアの問題点を理解し、その危険性を現場で利用者に訴え、世論を動かす必要があります。利用者とライドシェアについて会話をする機会、また、家族や友人と話す機会があった際には、ライドシェアの危険性を伝えることが重要です。

●事故がおきても運転者と利用者の自己責任
「タクシーは、多大なコストをかけて安全・安心を実現しています。点検・検査を受けている車両なのか、保険に加入しているのか、運転者に薬物使用や酒気帯びの可能性はないのか、何時間連続で働いているのかさえわからない運転者に、命をあずけられますか?」
●暴行・傷害・強姦などが起きても自己責任
「海外では、ライドシェア運転者による暴行・傷害・強姦・強盗・殺人事件が多数起きています。犯罪者かもしれない運転者の車に、あなたは乗りたいですか?また、家族を乗せたいですか?」
●運賃が不安定
「タクシーは、認可された適切な運賃です。悪天候や災害が起きた時には、料金が、10倍にも跳ね上がるような乗り物を、安心して利用できますか?」
●運転者は労災なし・最低賃金なし・すべてが自己責任
「運転者が事故や暴行・傷害による怪我をしても労災・社会保険がないため、医療費も自己負担で休業補償もなし。個人事業主扱いなので労働基準法は適用されない」

導入された諸外国でも、ライドシェアは危険性が高く、既に弊害が明らかとなり禁止や再規制が進んでいます。実際に導入した国が問題ありとした事実が、導入させてはいけない確かな証拠です。日本は決して外国の失敗を繰り返してはなりません。もしライドシェアが街に溢れれば、タクシー労働者の賃金も激減し、ライドシェアも同時に低所得化し、それを長時間労働で補えば、労働者自身の命と利用者の命が危険に晒されます。ライドシェアが侵入してくることにより、需要が奪われ、タクシー・バスは廃業に追い込まれてしまうでしょう。無責任な発信に惑わされることなく、正しい知識を持ち、その危険性を世論に訴えることが現場の乗務員にできる重要な行動となります。

定額乗り放題mobiの拡大
定額乗り放題サービスの攻勢が激化しています。定額乗り放題オンデマンド交通としてmobi (KDDIとの合併会社コミュニティモビリティ=三井物産・イオンタウン・吉本興業・イーオン等と提携)が、地域を名指して全国への拡大を表明しています。渋谷区では、道路運送法21条に基づく実証実験の期間満了にともない、4条許可での本格運行を計画して、地域公共交通会議で協議した上で申請を取り下げました。月額5,000円1回300円という採算性を度外視した略奪的料金設定は、既存の公共交通機関に悪影響が懸念され、労働者の働き方や賃金が適切かどうかも議論されています。バス・タクシー業界の労使による猛反発により既に運行を終了した渋谷区内での実証実験の際には、運転者の休憩もままならないなど、ずさんな運行管理が露呈しました。豊島区でもmobiが実証実験を行いましたが、途中から豊島区が主体となる形で期間延長が決定されています。渋谷区の場合と同様に、採算性のなさや、労働環境と安全性への懸念を示している以上、今後も地域公共交通会議の場などで主張し、問題のある定額乗り放題を阻止していかねばなりません。本格運行が各地で実施されれば、資本力を生かした安売りで、地域を荒らすだけ荒らして、既存の公共交通を廃業に追いやった上で、データ収集などの目的を果たせば、無責任に撤退して地域住民の足を失わせるといった暗い未来を迎えることになるでしょう。なんとしてでも実証実験だけで止める運動を強化する必要があります。 

政治のこと
 2023年1月23日に召集された通常国会が、6月21日に閉会しました。国民の暮らしと事業継 続への公的支援の継続と、平和か戦争かが問われ、戦争を未然に防ぐ平和外交が求められていたなか岸田政権は、昨年末防衛ではなく敵基地攻撃を可能とする大軍拡や、原発の新設・老朽原発の継続稼働など国の根幹に関わる大転換を閣議決定し、この国会で政府提出の法案58本を成立させています。5年間で43兆円の大軍拡の財源を捻出する「軍拡財源法」国民の血税で軍事大企業育成する「軍用産業支援法」や「原発推進5法」「マイナンバー関連法改悪」「入管法改悪」など戦後最悪の国会≠ニいわれるほど、「聞く耳」どころか国民多数の反対を押し切る政治姿勢を示しています。安倍元首相が殺害されたことにより明るみにでた、旧統一教会と自民党との癒着問題には口をつぐみ続けたことも重大でLGBT理解増進法」や「原発推進法」の改悪に手を貸した維新・国民民主の姿勢も忘れてはなりません。健康保険証を廃止してマイナンバーカードを国民に強制させる愚策を進め、挙句の果てに国民の個人情報を流出させるなどのトラブルが相次ぎ、信頼を失った岸田政権は、支持率26%、不支持率68%(毎日新聞8月末世論調査)と低迷しています。 簡単に防衛費の大幅増額を決めた一方で、少子化対策や格差是正対策は後回しにし、東日本大震災と原発事故の被災地の復興もままならない中で、なし崩しに老朽化した原発の運転期間延長を決めるなど国民の命と暮らしを蔑ろにする政権に、私たちの国と将来を委ねておくことはできません。決別すべきです!
 また、ライドシェア推進を公約に掲げる日本維新の会が、自民党にすり寄ることにも最大限の警戒が必要です。維新の目玉政策は2025年大阪万博ですが、パビリオン建設が間に合わない可能性が高まり、万博協会は建設労働者の残業時間の規制を「万博だけは例外に」と政府に求める恥知らずな行動に出ています。維新の会は昔から「最低賃金の廃止」や「公務員の賃下げ・非正規化」など労働者の賃金を下げる政策ばかり掲げてきた政党です。このまま次の国政選挙で維新が議席を伸ばし、自民との連立政権などを組むことになれば、恐ろしい将来が待っています。私たち自身の生活を守るために政治力の強化が必要です。それにはまず、国政選挙が行われた際には、必ず投票に行き、国民としての意思をはっきり示しましょう!私たちには、国民の命と暮らしを守る為に働く議員を選ぶ権利があります。棄権することなく必ず投票に行きましょう!最低でも強行採決に至らぬよう、国会でのねじれを作り、目指すは政権交代です!これまでどおり東洋交通労働組合は、全自交労連に結集する仲間とともに、国民の命と生活を守り、タクシー産業を支え、力となってくれる政党・議員を応援します。ひとりでも多くのタクシー産業を支える議員を選出し、国会に私たちの声を届けましょう! 

政治課題への取り組みと労働者の連帯
 東洋交通労働組合は、全自交労連の一員として立憲主義に基づく民主政治を守り、すべての人が平和で安全に自由に生きることのできる社会を目指して、立憲民主党を支持します。働く者の代表を国会や地方議会に送り出し、労働者の声を力強く国や自治体の政策に反映させるための活動に取り組みます。とりわけ、ハイヤー・タクシー労働者の抱える課題を解決し、賃金労働条件の向上を実現するため、全自交労連・交通労連ハイタク部会・私鉄総連ハイタク協議会で構成する「ハイタクフォーラム」を通じ、「タクシー政策議員連盟」の活動を、力強く支援します。
 また、全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)の一員として、交通運輸サービス産業で働く労働者の権利と社会的地位の向上に取り組み、国際運輸労連(ITF)を通じて世界の交通運輸労働者と連帯します。日本労働組合総連合会(連合)に加盟し、すべての労働者との連帯・共闘を推進します。

働きやすい職場・魅力ある産業へ!
 タクシー産業が魅力ある産業と評価されるには、まず賃金・労働条件・福利厚生を、他産業の平均以上に充実させ、安定した生活の継続と安心して働ける産業に向上させるため、上部団体を通じて「制度・政策要求」を継続します。
 女性や若者をはじめ、すべての人が働きやすい職場環境を整える取り組みが重要です。各種休暇・休業制度を利用しやすく工夫し、また育児・介護・病気治療など、特別な事情のあるタクシー労働者が、仕事との両立ができる柔軟な勤務シフトを可能にし、不利益な取り扱いのないよう制度を整える必要があります。
 タクシー=長時間労働というマイナスイメージを払拭するために、法令を遵守することは当然として、それ以上に労働時間・拘束時間を減らし、同時に労働時間の減少が賃金減少に直結しないよう、勤務シフトの見直しなど、労働生産性の向上に取り組む必要があります。  タクシー乗務員の平均年齢は60歳前後で推移し高齢化産業であり、加齢にともない疾病リスクが高まります。加えて若年層の癌などの重大疾患の早期発見にも繋がることから、健康診断時に脳MRI診や腫瘍マーカー検査を会社負担で行い、健康管理を徹底する必要があります。これらの健康管理を徹底した上で、少なくとも定年を65歳まで延長し、定年後の雇用については「同一労働=同一賃金」とし、雇用形態の違いによる不当な差別的取り扱いがないよう取り組む必要があります。
 労働者の人権と心の健康を守るために、すべてのハラスメント根絶に取り組む必要があります。性的指向・性自認の違いを尊重してジェンダー平等を推進し、多様性を尊重して人種や国籍、出自や思想・信条など、すべての差別・偏見を職場から排除しなければなりません。「ハラスメント対策関連法」に基づきセクハラ・パワハラ・マタハラなどあらゆるハラスメント行為の防止と労働者を保護する措置を講ずる必要があります。
 特にタクシー乗務においては、乗客からのカスタマーハラスメント防止対策は重要課題として取り組む必要があります。逃げ場のない密室の中で、乗客から受ける暴言や人格の否定は強いストレスとなり、心身の不調や離職の原因になっています。タクシー産業を、働きやすい魅力ある産業に変えるには、悪質な乗客から乗務員を守る企業姿勢が重要です。
 また、衛生的で安全・安心な職場環境を整え、施設・設備を改善する取り組みも必要です。事業場外労働であるタクシーの特性から、乗務中でも、休憩・トイレ・食事などを気兼ねなくできる設備を拡充することも必要であり、タクシー事業者間の協力、他産業や行政を巻き込んだ取り組みも必要です。安定的に長く働き続けられるよう、固定給主体の賃金体系に変えていく必要があります。オール歩合給のように売り上げが下がれば生活ができなくなるような賃金は、不安定な賃金のままでは、安心して働き続けたい産業とはいえず、賃金制度の見直しと同時に、物価高に負けない賃上げに取り組む必要があります。
 タクシー業界には、まだまだ労働関係法令違反が横行しています。最低賃金違反・労働時間管理の不徹底・日報の改ざん、会社ぐるみの運賃違反を行うなど、雇用者の義務も果たさない身勝手な悪質事業者は、タクシー産業が魅力ある産業へと変わる足枷になっており、撤退させることも重要です。タクシー産業が、働きやすい魅力ある産業だと認知されるには、タクシー乗務員自身の立ち振る舞いや行動も重要な評価基準です。ひとりの乗務員の行動が、善いことも悪いことも、「すべてのタクシー乗務員」の評価に繋がり、未来を左右するのだと自覚して行動することが重要です。公共交通機関に従事する、飛行機の操縦士や電車の運転士と立場は同じはずです。タクシーを、尊敬される憧れの職業に成長させましょう! 

東洋交通における賃金・労働条件の闘い
 2023年現在、運賃改定が行われ、利用者の乗り控えもなく営業収入は好調です。しかし実稼働率は80%前後が続き、業界全体と同じ乗務員不足の解消が最優先課題だということに変わりはありません。採用も進んではいるものの退職者も後をたたず、特に入社して間もなく退職する新人が目立っており、採用コストをかけても無駄な投資になっている実態があります。既存の乗務員にとって、賃金・労働条件改善のための原資を奪われているといえます。現在は乗務員不足解消が最優先課題であり、採用コストをかけるのはやむを得ないが、魅力ある賃金と魅力ある労働環境への投資で、退職者を減らす努力も必要です。2023春闘では、運賃改定後も労働分配率は維持した上で賞与・ハッピー年金制度改善の協議の開始、職場施設修理等の明記と、昨年を上回る労働組合への「22,560,000円の解決金」の回答を、誠意ある回答と評価し妥結・調印に至りました。
 東洋交通労働組合は、日本交通グループの一員となった際、組合として労働者の品質にも責任を持つと明言しています。しかし現状は、経営との約束を果たしているとはいえません。東洋交通は、直系子会社の中でも事故・苦情件数が群を抜いて多く、プロドライバーとしての品質向上は従来からの課題です。一方、接客・接遇の品質基準となるモニタリングについては、ここ10年ほど上位10位圏外に落ち、ゴールド比率を返上する残念な状況が続きましたが、現在、みなさんの努力によりベスト10入りを果たしています。日交と他社との違いは品質です。桜にNの下、乗務員として品質の維持・向上に努めることは、社員としての義務です。ひとりひとりが務めを果たすことで東洋の評価が上がり、賃金・労働条件闘争を優位にすすめられます。一丸となって品質向上に取り組み、賃金・労働条件改善を勝ち取りましょう!


2024年度東洋交通労働組合運動方針」

1.   公共交通としてのタクシーを守る制度・政策要求実現の闘い

 東洋交通労働組合は 「ライドシェア=白タク合法化」阻止をはじめとし 重要な社会インフラを担うタクシー労働者が 安心して働き続けられる制度・政策要求実現の為に、全自交労連の一員として全力を尽くします。
 制度・政策要求を前進させ、コロナ禍の最前線で エッセンシャルワーカーとして現場で働くタクシー労働者に必要な社会保障の実現・賃金・労働条件の改善と社会的地位の向上を目指します。

・新型コロナ感染防止策の徹底と、事業継続のための支援
・輸送の安全と労働者の権利を脅かすライドシェア導入と安易な自家用有償輸送拡大阻止
・タクシー・バスの輸送秩序を破壊する安価なデマンド交通導入の阻止
・タクシーの適正需要に応じた適正台数の制限と適正運賃の実現
・利用者の混乱をまねく恐れのある変動制運賃(ダイナミックプライシング)導入阻止
・エッセンシャルワーカーとして働くハイタク労働者の直接支援
・法令違反の一掃と悪質事業者の排除
・改正タクシー特措法運用の見直し
の他情勢変化に応じて必要とする制度・政策要求の実現を目指します。

制度・政策要求を実現する為には、世論に訴え理解を得る活動を強化することが必要です。その第一とて 「公共交通機関としてのタクシー」の安全性・利便性を利用者と社会に理解してもらう事であり 組合員・すべてのタクシー乗務員が現場で体現することが重要です。 第二は 「ライドシェア=白タク合法化」の危険性を社会に訴え理解してもらう活動です。雇用と労働者の権利破壊・国民の安全な移動の権利破壊を許さない為に、ライドシェア導入絶対阻止の運動を強化します。制度・政策要求を実現する為には 国会や地方議員で「タクシー労働者の賃金・労働条件改善」と「公共交通機関としてのタクシーを守る」運動に協力する議員を増やす必要があります。私たちの制度・政策要求に理解を示す議員の選挙運動にも力を尽くします。
 労働者と国民生活を守る為に、現行憲法の「平和主義・国民主義・基本的人権」を守る運動、労働基本
権を守り労働法制の改悪を許さない運動、憲法違反の「戦争法」「共謀法」の廃止を求める運動、原子力発電所の廃炉を求める運動を行います。

.東洋交通における賃金・労働条件改善の要求と闘い

 行動制限の解除と運賃改定の値上げ効果が重なり 2023年はタクシー乗務員にとって「バブル超え」ともいわれるほどの売り上げ上昇に低賃金への不満の声は減りましたが、コロナ禍離職で乗務員が減り、実稼働台数が減った上での売上増だという現実を踏まえて闘わなければなりません。
労働者と事業者にとって、物価高騰と公的保険料・税の負担増は深刻な問題であり、東洋交通では、今回の運賃改定時にはこれまでの労働分配率は維持できたものの、今後行われる運賃改定時、あるいは賃金見直しの際には慎重に協議し、適正に労働者の賃金を確保することが重要です。
 タクシー乗務員の賃金は 一般的には歩合給が大部分を占めていることから売上が上がれば手取りが増えるのは当然の結果であり、コロナ禍で営収が見込めなかった3年前には、オール歩合給の危うさと、労働時間(ハンドル時間)で支払われる賃金のありがたさを実感しました。よって、基本部分の底上げは重要な課題です。
 東洋交通では 30年以上前から基本給だけで東京都の最低賃金を上回る協定を締結し組合は日交資本となってからもそれを守り続けてきましたが 2023年10月には東京都の最低賃金が1,113円に引き上げられることが決定し、ついに基本給だけでは最低賃金を下回ることとなり減らし続けてきた余裕部分については消失することになります。
 現行、最低賃金法に定められた最低賃金の計算上では法令違反にはならないものの、本来あったはずの余裕部分については 形を変えてでも取り戻し、賃金の底上げを実現する必要があります。乗務員不足を解消するには 「安心して働き続けたい東洋交通」を実現し、公共交通機関を担う労働者に相応しい賃金を確立し、離職者を減らす必要があります。2024春闘でも、東洋基準で賃金・労働条件の改善の要求をします。新型コロナウイルス感染症が、5類感染症へと移行され、正常な社会へと戻りつつありますが、ウイルス自体が消滅したわけではありません。様々な制限の解除により感染リスクが高まっていることを考慮して利用者と労働者の命と健康を守るための対策を徹底することが重要です。現在、2022年11月に行われた運賃改定による増収により、タクシー乗務員の賃金体系の特徴を活かし、実質賃金を引き上げていますが、他産業に並ぶ賃上げにすすんで取り組んだタクシー事業者は 全国でも見当たりません。コロナ禍で歩合給主体の賃金体系が、乗務員の生活を困窮させ 大量離職をまねきました。結果、稼働台数不足により利用者利便が損なわれ、「ライドシェアを導入せよ」との推進派の声が勢いを増すなど窮地に追い込まれています。ひとたびライドシェアが導入されれば、国民の安全に移動する権利と事業者の権利も奪われ 旅客運送業そのものが崩壊し 労働者の雇用と生活も守れなくなります。ライドシェア合法化阻止の闘争は 公共交通機関としてのタクシーの存続を賭けた戦いです。この危機を乗り越えるために労使がそれぞれの立場で最善を尽くすことが重要です。また、乗務員不足解消がタクシー業界全体の喫緊の課題となっていますが、採用が進まず離職率が高い根本原因の分析に労使で取り組み 良化させなければタクシーが魅力ある産業へと躍進を遂げることはありません。「安心して働き続けたい東洋交通」を確立するために 乗務員の命と暮らしを守り、公共交通機関としての安全・安心輸送を担う労働に見合うよう、現行の賃金・労働条件を以下のように改善を要求します。

 【2024年春闘要求】
1)    月例賃金
@ 基本給のベースアップ
所定内賃金の時間単価を、有資格運転者に相応しい時給に引き上げる事。
A 能率給の「足切り」を、現行45,000円から減額変更する事。
B 能率給の支給計算時に 残業1時間あたりの腰高に加算される金額を、現行4,000円から減額変更する事。
C 通勤手当の上限を廃止し、実費支給する事。
2)    賞与
 営収配分の各ランクの配分率に、それぞれ5%上乗せする事。
3)    福利厚生
@ 退職金制度の新設または企業年金保険掛け金の増額を行う事。
4)    労働補償
@ すべての定額運賃輸送は、通常輸送との差額を実営収に加算して賃金計算を行う事。
A 無線配車時の「空転補償」は、完全履行する事。
B 修理手当は1時間あたり800円、新車代替または車検時の待機時間の修理手当は1時間あたり1,000円に増額する事。
5)    高速道路帰路料金の会社負担
@ 首都高速の帰路料金は、全額会社負担とする事。
A 外郭環状線の帰路料金は、全額会社負担とする事。
B 圏央道の帰路料金は、全額会社負担とする事。
6) 積立有給休暇制度の新設
@ 2年の消滅時効を迎えた未消化の有給休暇を、別に積み立て、病気療養・介護・自己啓発 (タクシー乗務員の資質を高める)・ボランティア活動等の決められた目的に対して利用できる制度の新設。
7)指定感染症蔓延時の保障

@ 指定感染症蔓延時に、国や自治体からの休業要請なき場合の勤務には、労働日毎の危険手当を支給する事。
A 会社が計画休業を決定した場合の賃金保障は、速やかに国の制度を利用して、暦日数の10割とする事。
B 社員が、就労制限・外出制限が適用となる濃厚接触者に指定された場合には、賃金保障を行う事。
C 指定感染症蔓延時に事業を継続する上で、社員の命を守る為の対策・予防の徹底をする事。

.組織強化と拡大の闘い

コロナ禍の影響で多くの組合員が奪われ、昨年2022年9月時点で在籍506名、2023年9月には在籍538名。499名まで落ち込んだ一昨年からは39名の仲間が増えています。2020年の最高値564名にはまだ届きませんが、一時危ぶまれた運営縮小の危機は脱したといえます。この約4年の間、退職あるいは脱退をせずにコロナ禍の危機を ともに乗り越え東洋交通労働組合の活動を支えていただいた組合員のみなさまには 感謝しかありません。
 タクシー業界全体ではコロナ禍で約2割の乗務員が退出し、それにより多くの労働組合は組合員の減少で存続さえ脅かされています。労働組合の弱体化は、そこの労働者の権利を脅かし、それまでの賃金・労働条件も維持できない恐れがあります。現に労働組合のないタクシー会社では、運賃改定後に賃率を引き下げるなど労使協議も行わずに一方的な改悪を実行した会社も存在します。
 日本国憲法(第28条)に定められた労働三権は、1.団結権(労働組合を結成する権利) 2.団体交渉権(労働者が使用者と団体交渉する権利) 3.団体行動権(ストライキをする権利)であり、この三権を保障するため、労働組合法が定められています。使用者との間で「労働協約」を締結する権能が認められ、賃金・労働条件・就業規則の勝手な変更は法的に無効とされます。締結の権利はその会社の労働者の過半数を超える組合員で構成される労働組合が有し、労働組合のある会社でも 少数ではその権利はありません。東洋交通労働組合は従業員の95%以上で構成され、労働組合としての権利を行使しています。特に日交資本になってからは、失いつつある東洋らしい文化を守りながら賃金・労働条件・職場環境改善の闘いを続けてきました。今後も、組織力・団結力の強化に努め、賃金・労働条件の向上に全力で取り組んでまいります。
 タクシー産業を「働き続けたい魅力ある産業」とする為には、労使が協力して安心して働ける職場環境と労働条件を構築し、公共交通機関の一役を担う労働に見合った賃金に改善することが重要課題です。良質な乗務員の確保と定着率を上げる為には、東洋交通社員が一丸となって闘う必要があります。東洋交通における賃金・労働条件を改善する力量を作る為にも、組合員の拡大・強化を図ります。また、東洋交通で働くすべての乗務員・職員・整備職員を組織化の対象とします。タクシーの業務と労働組合の役割を理解させ、東洋交通に定着してもらい、組織力を強化するために常に機関紙で発信し、乗務員として働く上での疑問・不安の解消に努め、その他の相談事も随時受け付けます。
 フリー・ランダムシフトの新人が参加できるような開催日程を設定し、新人研修会及び明番集会を行います。

.法対活動について
 
 組合員からの相談により、交通違反・人身事故による免許停止・取り消し処分等の軽減を求める為、上申書・嘆願書を作成し、警察・公安委員会に提出し、弁明・弁護等必要な行動を行います。
 個人的な各種法律相談については、全自交東京地連が顧問契約を締結している法律事務所に「初めの30分無料」で相談する事ができます。

.安全運行の取り組み

 労働組合は、事業者と協力して「公共交通機関としての安全・安心」を実現する責任があります。事故・違反を防止することにより、事業者は、コストを軽減でき、利益を増大させることで労働者の賃金・労働条件・職場環境改善の原資を生み出す事にも繋がります。
 多発している事故・違反を減少させるには乗務員ひとりひとりの自覚を促す活動を強化する必要があります。2019年から事故惹起者の技術的教習を会社教育に取り入れて来ました。再発防止には一定の成果を上げ教育を受けた乗務員からも「気付かされた点が多い」「受けて良かった」と好評です。会社教育は当然ですが 労働組合として今後も多様な方法を提案しまた協力し「安全・安心」の実現を図ります。

.文体活動について

 各クラブの協力を求め、全自交東京地連と日交労の文体行事への参加 友誼組織との文化交流に積極的に取り組みます。

.カンパ活動について

 2011年の東日本大震災以来の被災地・被災者支援から始まり、毎年各地で起こる災害で被災した全自交労連の仲間への支援カンパと 「白タク=ライドシェア合法化」を阻止する為の活動を行う「交通の安全と労働を考える市民会議」へのカンパ活動を実施してきました。 2021年と2022年は、全自交愛媛地本所属の駅前タクシー自主管理再建支援・福島沖地震で被災した宮城地本への支援・国際運輸労連に所属するウクライナの組合員への支援・連合東京が参加支援する コロナ禍で困窮する低所得者の子供に食事を提供するこども食堂への支援カンパ、2023年度はこども食堂への継続支援と連合東京要請による赤い羽根共同募金、秋田豪雨で被災した全自交労連の仲間への支援カンパを行いました。また、「市民会議」の活動も再開されはじめ、ライドシェア合法化阻止の運動強化の重要性から、支援を再開する予定です。
 労働組合の原則は、「助け合い・支えあい」です。可能な限り被害・被災した仲間への支援と、我々の声を代弁し世論に訴える活動を行う「交通の安全と労働を考える市民会議」への支援カンパに取り組みます。ご理解、ご協力をお願いいたします。 尚、コロナ禍の3年間は、個別にカンパの協力を求めずに春闘時に勝ち取った「解決金」からのみ支出し「組合員全員からのカンパ」として対応していますが、イベント等の再開により2023年度旗開きから、従来通りのカンパ活動と一時金支出のカンパを実施しています。2024春闘において「解決金」があった場合も、災害・被災支援・「交通の安全と労働を考える市民会議」活動支援に加えて、その他所属する上部団体等から正式な支援要請があった場合には、「解決金」の中から「東洋交通労働組合の組合員全員」の組織的カンパを行います。

 


東 洋 交 通 労 働 組 合

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関連リンク

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